欠けたクッキーの甘さ


 「ん〜うまい!このクッキーおいしい!」
 週末、いつものようにシンドウ家に泊まりに来ていたタクトは、入浴を済ませたあとのティータイムに心を和ませていた。
タイガーとジャガーの入れてくれるお茶はどれもタクトの好みに合わせてあり、本当においしい。
更に、今日はいつもと違いクッキー付きである。四角や丸のごくごく一般的な形をしたそれは、甘くておいしい。特にタクトはチョコチップが気に入った様子だ。
「ふふ、嬉しいです。今日もお泊りに来るときいて、作っておいたんですよ?」
そういうジャガーはニコニコと上機嫌だ。となりのタイガーもタクトをみて微笑んでいる。
「えっ手作りなんですか!」
ちょうどつまんだクッキーを凝視していう。
「ふふ」
そんなタクトに、ジャガーは意味ありげな笑みを浮かべて口元をトレイで隠した。
やりとりを見ていたスガタは、タクトとジャガーを交互にみて、はぁとため息をつく。特に視線がタクトに行ったときは複雑そうな顔をしていて、それに気がついたタイガーが眉を下げた。
「でも食べ過ぎるなよ?腹が苦しくなって寝れなくなっても僕は知らないぞ」
「む。そんな子供じゃありませんから。ご心配なく!」
スガタの注意も右から左で、タクトはクッキーを口に運ぶのをやめずにいる。本当においしそうに食べるものだから、こちらまで幸せな気分になってくる。
「あれ、スガタは食べないの?」
タクトがふと気がつく。
紅茶ばかり飲んでいて目の前のクッキーには手を付けてないスガタをみて、不思議に思ったタクトが問いかけた。
「僕はいいよ。…タクトのために作ったんだからね」
「そっかーじゃあ遠慮無く…ん?僕のために『作った』って言った?」
瞳を瞬かせて、タクトはきょとんとした顔でスガタをみた。視線の先のスガタは心なしか恥ずかしそうにしていて、タクトと視線が合わないように紅茶に口をつけながらそっぽを向いている。
「実はですね、坊ちゃんの手作りなんですよ」
「えぇ!?」
「僕がお菓子を作るのは、おかしいか?」
テーブルに紅茶をおいて、スガタはチラリとタクトを見やる。するとタクトは勢い良く左右にブンブンと首を振った。
「おかしくないおかしくない!!凄く嬉しいよスガタっ!」
言いながらガタンと席を立つと、スガタの元まで行ってぎゅうっと抱きしめた。そして頬にちゅっとキスをしてスリスリを頬ずりしている。
それを目の当たりにしたジャガーは黄色い悲鳴をあげてトレイを思い切り抱きしめる。
「いや〜んタクトくん大胆!!」
一方タイガーは目元までトレイで隠して赤い顔をして悶えながら一言「お熱いですね」と呟いて我慢できなかったのかその場にしゃがみ込んで、ジャガーと同じように黄色い悲鳴をあげるのだった。
そんな状況のなか、タクトは一向にスガタから離れようとせずに、時折頬にキスをして嬉しそうにスガタを抱きしめている。
「も、もういいから今日は休んでくれ!」
だんだんと頭痛のしてきたスガタは、耳まで真っ赤にして恥ずかしそうにメイド達に声をかけ、無理矢理イスから立ち上がると、タクトをくっつけたままズルズルと部屋を出て行ったのだった。


END



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