遠い街に想いを馳せて
「タクトは、学園を卒業したら本土に帰るのか?」
二人寝転んだスガタのベッドの上。窓の向こうの夜空を眺めながらスガタが小さな声で言った。
部屋に差し込む淡い月明かりに照らし出されたスガタの表情は憂いを漂わせていて、タクトは自分の胸がチリリと傷んだ。
「どうだろうね。実はまだ…決めてないんだ。」
3年になってから決めようかな、なんて。そう続けるタクトの声はスガタの心をぎゅうっと締め付ける。
きっと彼は自分のことを想ってそう返答したんだろうと、スガタは思う。以前自分がこの島から出れないことを彼に告げているから、自分に 「本土に帰る」と言えばきっと悲しむだろうと。
だから曖昧な返事をしたんだろう、と。
「そうか…なら、3年になってタクトの心が決まったら、ちゃんと報告してくれよ?」
「もちろん」
うれしさの滲むタクトの声。つられてスガタも微笑む。
「ねぇスガタ。こっち向いて」
そう言って手を重ねてきたタクトに、スガタは素直に応じる。視線を合わせれば、僅かに潤んだタクトの瞳が目の前にあった。
「タクト…」
「僕はさ…もしスガタが本土に帰れって行っても、絶対に帰らないよ。僕の戻ってくる場所は、スガタの隣だと思ってるから。…本土には『帰れない』よ」
「タクト…」
タクトの言葉が身体に染みこんできて、胸が熱くなった。この想いを言葉にすることができなくて、スガタはタクトの瞳をじっと見つめた。
「もちろん、残してきたじいちゃんが心配だから、ちょーっとだけ行ったりはするかもだけどね。それぐらいは許してくれよ?」
そう言ってきれいに笑ったタクトは、ぎゅうっとスガタの身体を力いっぱい抱きしめた。
ちゅっちゅとリップ音をたてながらスガタの頬にキスをする。何度も何度も。
「ありがとう、タクト…、」
涙声の彼に返事の代わりと唇に深いキスをして、タクトはシーツで月明かりからスガタと自分を覆い隠した。
「愛してるよ、スガタ。僕のスガタ」
END
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