僕は君が好き


「僕はシンドウ・スガタが大好きだ」
 突然何を言い出すのかと思えば、タクトはいかにも『僕は真剣だ』という顔をして、ソファーで本を読んでいたスガタの前に仁王立ちして「大好きだ」宣言である。
「あータクト?どうしたんだ、突然」
「突然ではありません。ずっとそう思っていました」
「いや、そういうことを言ってるんじゃない」
 そんなことを改まって言われても困る。スガタはこめかみを押さえながら深いため息をついた。
タクトがこんなふうに唐突になにか言い出すのはこれが初めてではない。初めてではないだけに、スガタの悩みの種でもある。
「僕はスガタが凄く好きなんだ!大好きだよ!その晴れ渡った雲一つないようなキレイな青い髪も好きだ!」
 スガタのことなどお構いなしに、タクトは再び口を開いた。出てくる言葉はまるで愛の告白だ。
「宝石のような瞳も好きだし、白い肌も好きだし、何にでも真剣なところも好きだし、大抵のことはそつなくこなしちゃうところも尊敬してるし好きだし、稽古中の表情も好きだし、授業中にノートを取ってるときの横顔も好きだし、部活中にワコの妄想がだだ漏れで困ってる姿も好きだし、」
「なんだそれは」
 お前は普段から何を考えているんだと、半ば呆れた顔をしたスガタをよそに、更にタクトは続けていく。
「少し薄い唇も大好きだし、声も好きだ」
「今のは1つ引っかかったな」
 唇だけ大好きってなんだ。スガタは2度目のため息をついた。なんだかんだとちゃんとタクトの話をきいてしまうのも、恐らくは自分もタクトのことが好きだからなのだろうと思った。
「だから僕は夜も眠れない」
 急に今までとはトーンの違った声にスガタはタクトをじっと見つめた。その表情は驚いていたが、同時に期待も込められたものにもみえた。
「その意味は?」
 スガタはタクトと視線を合わせたまま、じっと動かない。
真剣なスガタの様子に、タクトは自分の鼓動が早まるのを感じた。スガタが自分を無視するか話を遮ってくれば、いつもの冗談で済ますつもりでいた。
けれど今目の前にいるスガタは、まるでタクトの気持ちを読んだように真剣に向き合ってくれている。
 やっぱりスガタは凄いよ。タクトは一度深呼吸をすると、スガタの前で片足をついた。
「僕はシンドウ・スガタが大好きだ」

END



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