sweet liquor


 タクトが居候になってもう長くなる。もう習慣のように風呂は一緒に入っているし、寝室も最初は別々だったはずなのに、今ではスガタのベッドで毎日一緒に眠っている。
そんな仲睦まじいタクトとスガタなのだが、今夜湯上りの体休めにリビングに戻ってきたのはバスローブ姿のスガタ一人だけだった。
肌から立ち上る湯気に、ほんのりと逆上せているようにも見える。どこか不満げな表情でイスを引き腰を下ろすと、湯上りにといつも用意されていたコップに手を伸ばした。
 「ん、今日はソーダ水じゃないのか」
いつもとは違い、コップの中の液体にはうっすらと黄色く色がついている。それに気づいたスガタだったが特に気に止めた様子もなく、ただこの乾いた喉を潤したくて一口喉を鳴らして飲み込んだ。
 「少し甘いな」
何かの果実ジュースだったのだろうか。そんな感想を抱きつつもう一口、もう一口と喉を潤していく。よほど喉が乾いていたのか、そのまま一気に飲み干してしまう。
空のコップをテーブルに置くと、何か自分の身体が先ほどよりも熱を持っているような感覚がして、首をひねった。すると、ぐらりと視界が揺れて意識がふわりと曖昧になり、どこか夢心地な気分になる。
そんな自分を不思議に思いつつも、熱い体温に浮かされるように思考も曖昧になっていき、先ほど湯船でタクトにちょっかいを出され、腹を立てて先に上がってきたというのに不思議なものだとスガタはその心地良さに笑みをこぼした。
 「タクトのやつ、遅いな…」
ふわふわとした身体を持て余すように独りごちる。その頬は先程よりも赤く染まっており、瞳も潤んでいた。
 そこに、慌てたような足音が近づいてきたと思うと、ガチャリと思い切り扉が開かれた。
スガタが視線をやると、情けなくまゆを下げたタクトが上半身裸のまま飛び込んでくるところだった。
バスローブ姿で既にコップの中身を飲み干していたスガタを見て、タクトは大きく口を開いた。
 「スガタ!ひどいよ先に行っちゃうなんてさ!」
 「うるさいおまえがわるい」
 「でもひどい!」
ぴしゃりとスガタに切り返され、それでも負けじと噛み付くタクトだったが、ふと彼に違和感を感じてじっとその顔を見つめた。何か変な感じがする。タクトは穴が開くほどスガタの顔を凝視するのだが、その理由が見当たらず首をひねる。
 「スガタ、なんか変?」
 「なにがだ」
そこでタクトはハタと気づく。湯船から上がった直後のような濃赤に染まった頬と可愛らしい耳。潤んだ目。そしてコップに口をつけたときに濡れたのだろう唇。
そこまで確認して、ゴクリと唾を飲み込んだ。そして恐る恐る口を開く。
 「なんか…なんかスガタすっごくエロい…」
そう、ねっとりとした視線でいうタクトに、スガタは肌が粟立つのを感じて息を飲んだ。
 「ねえどうしたの、やっぱりその…さっき僕がいたずらした所為だったり、する?」
タクトはその瞳に欲望をにじませながら、じりじりとスガタとの距離を詰めていく。声色は期待に満ちていて、ドキドキと高鳴る胸に呼吸を乱し始めていた。
 「違う…違う、でも、タクトに凄く触れたい…」
急に態度を変えたタクトに戸惑いを見せつつも、欲の篭った男の目でみられ、スガタも同調するように胸を高鳴らせてしまう。普段は絶対に言わないような言葉もするりと口をついて出て、その恥ずかしさからか、さらに頬を染め上げる。
 「スガタ」
普段よりも低い声で名前を呼ばれ、胸がきゅんと痛む。バスローブの胸元を右手でぎゅっと掴み、口を強く結んでその痛みをやり過ごすスガタに、タクトはそっと腕を伸ばした。
優しく撫でられた頬は熱を持っていて、ぞわりとした感覚がそこから広がりスガタは瞳をきゅっと閉じた。
何故だかいつも以上にタクトに触れたい。触れられたい。抱きしめられたい。
そんな欲求が次から次へと湧いて出てくる。興奮に乱された呼吸は荒く熱い息を吐いた。
 「スガタ可愛い」
そう、甘く囁かれ口づけられる。そのまま深く貪られると体の芯がじんとした。
座ったままのスガタは、流れこんでくるタクトと自分の混じり合った唾液を口のはしから垂らしながら、縋るように舌を突き出す。タクトの首に回された腕は少し震えていて、髪をすくように撫でている。
 「ん……、ふ、んッ」
タクトはスガタの胸元の緩んだバスローブに手を挿し込み、芯を持って赤く色づくそれに指を這わせる。何度か指先で擦るとビクビクとスガタの身体が反応を返した。
 「あっあ!ん、ぁッ…!気持ちいい…ッそれ、ぁあッ」
強めに摘むと唇を離され、甘ったるい声を惜しまず発するスガタにタクトは今までにない興奮を覚えた。
 「好き、好きだタクト……ッあ!ぁ、あっ!」
なんども好きだと繰り返しながら、自分から胸を突き出すようにタクトに縋るスガタ。
いつもは唇を噛んだりと必死に声を堪える彼なのに、今日はそういった仕草も行動もなく、むしろ見たこともないような素直な言動に、いつも以上に押さえの効かなくなったタクトは興奮の熱にじっとりと汗をにじませている。
膝を折って胸の前に顔を持って行くと、胸の突起を弄っていた手を腰に回して代わりに唇で愛撫する。やんわりと尻を撫で掴むと、スガタは目尻からポロリと涙をこぼした。
そこだけでなく胸や脇、腹筋をなぞるように舌を這わせていく。
 「ねえもっと、タクトの指好きぃ…!キスも、して…ッもっとぉ…っ」
求めるように開いたスガタの両足の間から、バスローブに隠れたそれが目に飛び込んできて、バスローブを後ろから左右に開くように引くと、すでに硬く先から透明な液を垂らしているそれが丸見えになってしまう。
ふるふると震えるそれに、タクト自身もゾクゾクと腰を震わせた。
 「ああ、ダメだよスガタ、僕我慢出来ない……ここでしてもい、」

言いかけた瞬間、全力疾走する足音が廊下から響いてきたと思えば鼓膜に響く慌てた声と共に扉がバタンと物凄い勢いで開けられる。

 「坊ちゃま!!申し訳ありません間違ってっ」

 突然、先ほど部屋に飛び込んできたタクトよりも勢い良く駆け込んできたメイドのジャガーが、呼吸を乱しながらスガタを呼んで、そして固まった。
 「あ……し、失礼致しました……坊ちゃま私さきほど手違いでお酒をお出ししてしまったのですが、あの、なにもなかったことに致しますね…失礼致しました」
そう、真っ赤な顔で一呼吸で言ったジャガーは、言い終わると同時に来たときと同じかそれ以上の速さで、なおかつ黄色い悲鳴とタイガーを呼ぶ叫び声をあげながら部屋を出ていってしまった。
残されたふたりは呆然と彼女が出て行った出入口を見つめていた。

 「スガ……」
突然の出来事に、うまい言葉も見つからず。
しかしスガタがこうなってしまった原因がアルコールにあると判明したタクトは、現実逃避のように「ああそうだったんだー」などと気の抜けた声でいい、一方のスガタは見られてしまったショックに酔いもさめ、指先が冷えるのを感じていた。

この後、あまりの気まずさにスガタはこの事でメイドのふたりを責めることもせず、むしろ不可抗力とはいえアルコールを摂取したことにより、乱れタクトにあられもない言動をした自分を責める日々が続くのだった。
甘えたいと求めたいと思った気持ちは本物ではあるが、あまりにも恥ずかしすぎたのだ。
 タクトと言えば、そんなスガタを慰めようと「すごく可愛かったしあんなに素直なスガタ僕すごい興奮しちゃったよ!」などと盛大に口を滑らせ墓穴を掘り、丸焦げにされるのをワコが目撃したという。


END



   [タクスガ]に戻る

   [INDEX]