早朝バスタイム


 「スガター!早く行こうよ!」
 「そう急かせるなよ。まだ朝食までには十分時間があるだろう?」
 「だ、だってほら…ゆっくりしたいじゃん?」

 もそもそとベッドから起き上がるスガタの横で、朝からテンションの高いタクトはベッドに両手をついてギシギシいわせている。
その振動でゆさゆさと身体を揺さぶられるスガタは呆れ顔で朝からため息をついた。
 正直朝は得意な方ではないし、低血圧でなくてもタクトのようには振る舞えそうにはない。スガタは二度目のため息をついた。


 「んーやっぱり最高!朝から温泉は癖になるね。僕もう一生これがいい」
 寝起きのだるい身体をグイグイ押されてやってきたスガタは、いつものように縁によりかかって天井を仰いでいるが、一方のタクトは今のところ飽きる気配はないらしく、手のひらに湯をすくってばしゃばしゃと音を立ててご機嫌である。
 しばらくすると満足したのか、スガタのほうを向いてニコリと笑った。
 「よし、じゃあ今日は僕が先に背中を流してあげる」
そういって湯船からあがったタクトは、スガタ愛用のスポンジを手に取りボディーソープで泡立て始める。
 「ほら、早くおいでよスガタ」
 「はいはい…じゃあお願いしようかな」
楽しそうなタクトにつられ、スガタは今日ようやく笑顔を見せた。

 湯船から立ち上がったスガタの身体を湯が流れ落ちていく。窓から差し込む朝の日差しをキラキラ反射させていて、それをみたタクトは 「ぉぉ…スガタさんセクシー」っとからかってくる。
 「はあ、おまえはいつもそうだな…まったく」
そんなタクトに苦笑しつつも、いつもの屈託の無い笑顔で返されては言い返す言葉もなく、スガタは大人しくタクトの前のイスに腰をおろした。
 「かゆいところがあったら言ってくださいね〜」
 十分に泡立っていた柔らかなスポンジを背中に、そこから首筋、脇、脇腹と順番にスポンジを滑らせていく。
なめらかで白いスガタの肌は男子高校生とは思えないほどきれいで、タクトはこの手触りのいいスガタの肌が好きだった。
 最後に足の裏まで洗い終わると、タクトは一度汲んだ湯でスポンジを洗って、まだ泡まみれのスガタに手渡した。
 「ん?僕はまだ身体を流してないぞ?ちょっと待てって」
スポンジを受け取りながらシャワーのコックに手を伸ばしたスガタに、タクトはすかさず口を開く。
 「いいのいいの!今日は2人で泡まみれになろうよ」
 「タクトおまえ、またよからぬことでも考えてるんだろう…僕はい、」
 「はいよろしくお願いします!」
スガタがすべて言い終わる前に、タクトは素早くスガタが手に持っていたスポンジにボディーソープをかけると、さっさと背中を向けてしまった。
有無を言わせないその態度に、スガタは本日三度目のため息をついて、そして仕方ないなと目を細めた。
 「ったく、おまえは。今日は徹底的に泡まみれにしてやるから、覚悟しておけよ」
そうタクトの耳元でささやいて、グッとスポンジを持つ手に力を込めた。


 「へへ、泡だらけ」
 宣言通り、これでもかと言うほど全身を泡だらけにされたタクトが、自分の身体についている泡をすくって手でこねながらいう。
スガタといえば、スポンジを握りしめたまま達成感に満ちた笑顔で額を伝っていた水滴を腕で拭っている。
 「これで満足だろ。今日は長湯になってるから、そろそろ流して出るぞ」
 「ええー」
 「なんだその不満げな声は。もう十分付き合っただろ」
もうこれ以上は無理だと立ち上がったスガタを、もこもこと身体の泡で遊びながらタクトはジト目でスガタを見上げる。その顔には太い文字で 「絶対やだ」と書いてあるようにも見える。
シャワーのコックにスガタの手が触れたあたりで、タクトは同じく泡だらけのスガタの身体に手を伸ばした。その手でスガタの腕を掴むと、足を滑らさない程度に下にひく。
 「僕は最後まで面倒みてやるから安心しろ。その泡今すぐ流してやる」
 「絶対やだ!」
 「タク、」
まさにコックがひねられる直前に、立ち上がったタクトはスガタの唇を自分の唇でふさいでしまう。
 「んっ」
下から見上げる形で唇を奪われたスガタは、そのまま引きずられるように膝を折ってしまう。
 「ふ…ん、ん…!」
ついに完全に膝をついてしゃがみこんだときにはタクトに泡ごと抱きしめられた状態で、吸い付かれていた舌をようやく開放されたスガタは唇の端から唾液を零しながら、不機嫌な顔でタクトを睨みつけた。
 「タクト…ふざけ過ぎると本気で怒るぞ」
 ただでさえ今日は朝からテンションの高いタクトに付き合わされて、普段はしないようなことまでさせられ、さらに朝食の時間も迫っているのにこの態度。流石のスガタも苛立ちを覚えるは仕方のないことだ。
 「大体、今日のお前は変だ。何かあったなら聞くから。落ち着け」
 「ほんとむり」
こいつ人の話ちゃんときいてたのか?そうスガタが口を開こうとしたとき、タクトは再び唇を寄せてきて、慌てたスガタが身体を後ろに引くとキスをすることはなかったが、代わりに抱きしめられたままだった手で尻を撫でられてしまった。
泡のぬめりを借りていつもよりも滑りのいい肌にタクトは口の端を上げる。
 「スガタ気持ちいい〜」
両手でぬるぬると撫で回されて、スガタは別の意味で慌てだした。これはまずい。夜よりも早朝のほうが調子がいいなどとは、一体誰が言っていたのか。
いやらしく撫で回されてしまったせいで、スガタのそれが徐々に反応を示してしまっている。
 「やめろタクト!本当に僕を怒らせたいのか!」
 「だからもう本当、無理なんだって!」
 「何が無理だって言うんだ!バカ!」
会話にならない会話と、反応してきてしまったそれにスガタは段々パニックを起こしそうになる。もうこれ以上タクトの好きにやらせていては、どうなるかなど答えは明白なのだ。

朝からしかも風呂場でなんてとんでもない。万が一メイドの二人やワコがきてみろ!
しかしスガタの心の叫びも虚しく、ぬるりと山の隙間、奥まった場所にタクトの指が触れてくる。
いよいよまずいとスガタが渾身の力でタクトの身体を振りほどこうともがいてみるが、如何せんお互い泡まみれのせいで上手く動けない。それどころか転倒を避けるために身体が力加減をしてしまって、タクトにすればただ身じろいだ程度だ。
 「ふふ…うまく動けないでしょ」
そんな格闘の中、タクトは目を細めてにやりと笑った。
そして泡のついた指をスガタの中に押し込んでしまう。動きは気遣うように優しいが、的確にスガタのいいところを探り当ててグリグリと指を動かされてしまう。
 「んっ、ぁ、ン!タクト、やめ…あっぁあ!」
 「可愛いスガタ…凄く可愛い」
そうため息のように声を漏らすタクトに、スガタは不覚にも胸を高鳴らせた。
可愛いなどと男が言われて喜ぶ言葉ではないが、その声が、タクトの普段より幾分ひくく掠れた、熱のこもった声に身体が反応してしまった。
スガタの、もうみなくても分かるほどに固くなったそこを、タクトは中を探る手はそのままに握りしめてくる。
 「はあ…は、ん…ん…ぁ」
誘われるように視線を落としたスガタは、泡の中ではっきりとは見えないが、肌色のそれが上下に動いているのを視界に捉えて、一気に頬を赤く染め上げる。
同時にじわりと瞳に滲んだ涙に視界を邪魔されてしまうが、自分と同じように固く勃起したタクトのそれに気づいて、身体が勝手に期待に震えた。
 「泡で、すごいぬるぬるしてる…ねえ、気持ちいい?」
これ絶対泡だけじゃないよねスガタ。合わせた視線の先のタクトの瞳には欲望の色が見えるようで、たまらず唾を飲み込み喉を鳴らしてしまう。
ごくりと上下する首を見て、タクトは泡がなかったら噛み付いてるところだと思った。
肌を伝っていく泡はとても卑猥に見えて、タクトは呼吸を荒くする。
 「本当は、僕のも触って欲しかったんだけど、ごめん、いれても」
 「いい!いいから、もう…はあ…あ、もう僕も」
熱に浮かされた瞳で言われ、今度はタクトが唾を飲み込む。ぐちゅぐちゅと音を立てるそこから指を引き抜くと、タクトは床に腰を落ち着かせて、ぬめるスガタの身体をその上に跨らせる。
お互い荒い呼吸を繰り返しながら、これからやってくるであろう快楽に胸を高鳴らせ、期待に満ちた視線を絡ませる。
見せつけるようにゆっくりと腰を下ろしてくるスガタの身体を支えながら、降りてくる唇にキスを落とす。
軽いリップ音からくちゅくちゅと舌と唾液の絡んだ音に変わって、スガタの中にすべてが収まる瞬間に、タクトは深く唇を合わせてその声を吸い取った。
くぐもったスガタの声が直接頭の中に響くようで、さらに興奮して身体を熱くした。
 「はぁ、あ、ん…っん!ん…ふあ、はぁー…あん」
抱きしめあう身体はいやらしく肌を滑りあわせて、もう半分以上落ちてしまった泡はしゅわしゅわとお互いの肌を伝っていって、その感触に背筋から頭のてっぺんまで震えが走る。
下から突きあげてくるタクトの動きに合わせながら身体を揺すると、たまらなく気持ちがいい。
落ちてしまった泡のせいで露になったスガタのそれは、先端からびゅくびゅくと先走りとも違う液を吐き出している。
 「ね、もう、僕イきそう…ッ!スガタ、スガタ、もう」
 「僕もッ…タクト…!」
 「あっ!ぁあ…やッ」
 「んッふ、んッ」
その瞬間に力いっぱいお互いを抱きしめあって、先にスガタが吐き出した精液の熱さを感じながら、タクトは伸縮する中に思い切り欲望を放った。

 達したあとのけだるい感覚と、乱れた呼吸に邪魔されながら舌を絡ませあっていると、タクトが 「あのね…」と声をかけた。閉じていた瞼をあげると、タクトが視線を泳がせていた。
行為の前の態度は一体なんだったのか、満たされた表情のスガタは何かと不思議そうに首を傾けると、タクトは言いにくそうに口を開いた。
 「とびらの…………とびらのむこうにひとかげがありますスガタさん」
心なしか身体を震わせながら、搾り出すように放たれた、あまりにも衝撃的すぎる言葉に、ショックで声もでないスガタは悲鳴をあげるかわりに呼吸を止めて、思い切り目を見開いたかと思えば一瞬間を置いて傍にあった手桶で勢い良くタクトの脳天を叩きつけた。
容赦のない渾身の一撃。小気味いい音が風呂場に響いて、タクトは目にいっぱいの涙を溜めながら、そのまま意識を手放したのだった。
 その後、背中のながしっこ禁止令が発令されたのだが、それもどこかずれてるスガタにタクトはまったく懲りてない笑みを浮かべて、次はどうしようかと腕を組んだ。


END



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