秘密の放課後


部活も終わり、放課後の夕暮れの中スガタとタクトはちょうど学園の正門をくぐったところだった。
 「まあ……!」
2人連れ立って歩く姿は親密さを醸し出していて、彼らのファンが目撃すれば黄色い声をあげていたところだ。
本日そんな2人を目撃したのは、南十字学園高等部の保険医であるオカモト・ミドリである。
彼女もまた美少年好きということもあり、学園のアイドルと言っても過言ではない彼らのことはリサーチ済みである。
実は彼女もまさに今、最近ようやく現れた年下の彼氏、アオキ・ツバサ君(1年)と仲良くお忍び下校中だったりするのだが、彼氏そっちのけで瞳をキラキラと、否、ギラギラと輝かせていた。
 「……変わらないね、美少年好き」
ついつい嫌な予感がしてしまうのだが、口には出さないのが彼の優しさである。

そそくさと後をつけるオカモト・ミドリらに気付いているのかいないのか、スガタとタクトは馴染みのカフェに入って行く。
もちろん後をつけるオカモト・ミドリは彼氏を連れ、顔がバレないように彼の後ろに身を潜めつつ入店すると、2人が座った一番奥の角の席が見えるように斜め後ろの席につく。
このときウエイトレスが若干引いていたことは気付かなかったことにする彼は、現在つらい立場である。
メニュー表で隠れながら様子を伺うと、どうやらタクトはこの店で一番大きなパフェを注文したところらしく、「やっぱりこの大きさが?」など途切れ途切れに耳に入ってくる。一方のスガタは簡素にコーヒーのみのようだ。
程なく注文の料理がマスター直々に運ばれてくると、3人で親しげに何かを話しているようだった。
 「マスターったら、あの2人とずいぶん仲がよさそうなのね……気になるわね……」
メニュー表を両手で握りしめながら震える彼女に、もはや同行しているアオキ・ツバサもかける言葉がないのであった。
 「あっ!すみません?」
彼が今できるのは、ちょうど通りかかったウエイトレスにメロンソーダを注文することくらいだ。

無事巨大パフェを完食し終えた彼らは、どうやら映画館に行くらしく、尾行中の2人は先回りすることにした。
今この近くにある映画館で上映中の映画は最近生徒の話題に上がっているものがあり、美少年もとい生徒たちに詳しい彼女は迷うことなくその映画のチケットをとった。
すると、そこにちょうどスガタとタクトが到着し、予想通りに彼女の手元にあるものと同じ映画のチケットを購入していく。
 「ふふ、日頃から生徒たちのことをよく見ている私の愛の賜物ね……!!」
ぎゅっと握りしめられたチケットは、ぐしゃっと音を立てて無残な姿となってしまった。それをみたアオキ・ツバサは本日3度目のため息を付くのであった。本当なら止めたい。けれど残念なことに彼女の暴走の止め方を、彼はまだ知らないのである。

 「まさかの一番後ろね……」
慣れた様子でシアターの一番後ろの列に腰を下ろした2人から、今度は出来るだけ距離をとって一番後ろから1つ手前の席についた彼女は、一体いつ用意したのか薄暗い映画館にも関わらずサングラスをかけ、下にずらすと背もたれに隠れながら様子を伺っている。完全に不審者のそれである。
 「さすがにここからじゃ、どんな会話をしているのかはわからないけど、人が少ないお陰でよく見えるわ!」
さすが平日の夕方である。話題作といえど元々人の少ない島の映画館である。席に付く人は疎らだ。
鼻息荒くサングラスをカチャカチャとずらす彼女に、アオキ・ツバサは本日4度目のため息を付くのであった。
もはや彼も、止める手だてを知らず一緒についてきてしまった以上、最後まで付き合うと腹を括るしかないことを悟るのであった。

予告が終わり本編が始まる頃、ちらっとタクトがスガタを見ると、示し合わせたようにスガタもタクトに向いてキスをする。
あまりにも自然な流れにみえたキスに、尾行中の彼女は映画どころではない。
ちなみに年下彼氏の方は学園で2人をよくみかけており、そのただならぬ仲を知っているので映画に夢中だ。
ちゅっちゅとリップ音が聞こえてくるのではないかと言うほど、しつこくキスをするスガタとタクトに、ここが映画館だということも忘れ声をあげそうになるのを必死にこらえる。よく考えれば自分もお忍び中なのだから、ここでバレては正直首も跳ねかねないわけである。オカモト・ミドリは2つの意味で今その忍耐を試されているのであった。
スクリーンを観ようとするタクトにスガタが手を出したり、しばらく何もないと思えば突然身体をビクつかせるタクトにオカモト・ミドリの興奮は増すばかりだ。
今更ながら、あの2人は付き合っているのだと確信する。
 「(大胆過ぎよっ!ああもう誰かに気付かれたらどうするの???!)」
次第に映画もクライマックスに近づき、スガタとタクトもある意味クライマックスである。もぞもぞと動く2人の姿がスクリーンからの明かりで時折淡く浮かびあがり、今まさにスガタがタクトのシャツに手を入れようかというところだった。
 「(いや?!び、美少年同士のそんな!ダメよ?!!)」
頭から湯気でも出しそうなほど顔を真っ赤にした彼女もまた、クライマックスである。

その後、映画館を後にしたスガタとタクトはどうやらそのまま帰宅するようで、心なしか疲れた顔をしたタクトに、心の中でエールを送ったオカモト・ミドリと、その年下彼氏であった。
満足げに一息付く彼女は、一つの任務を終えた達成感に満ちていた。

翌日、廊下で2人とすれ違った際にスガタから「内緒、ですよ」と耳打ちをされた彼女は、赤面しつつも「(やだ美少年好き!素敵……!) なっなんのことかしら?!」と耳まで真っ赤に染め上げながら声を裏返していたことを、最後にお知らせしたいと思う。

END



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