べったり


 「これは一体どうしちゃったの?」

 部活動のためワコが部室に入って最初に目にしたのが、普段はあまりそういうことに積極的ではないタクトがスガタの隣にベッタリとくっついている姿だった。
それは仲睦まじくピッタリと、スガタの腕に腕を回して寄り添い立っている。
 ワコがいまいち状況が飲み込めずにいると、彼女に気付いたタクトが顔を真っ赤に染め上げ、勢いよくスガタと距離を取った。
 「い、いつからそこに!?」
言ったタクトの声は裏返っているし、わあわあと慌てふためいている。それに比べスガタは余裕の笑みを浮かべ、ワコと視線を合わせた。まったく対象的な反応である。
 「やあワコ。今日の部活は部長の急用のため自主練だそうだ」
 「えっ!あ、うん!そうなんだ!ありがとう」
そっかー自主練かー!そうつぶやきながらワコはカバンを下ろすとそそくさと今来たばかりの部室をあとにしてしまった。
 「なにも出て行かなくてもいいのにな」
どこかへ行ったと思われるワコの髪がドアから覗いているのを確認しつつ、スガタはふふっと笑いながらそっとタクトにも聞こえない声でつぶやく。
 一方のタクトはというと、ワコの目がなくなったことにようやくの安堵の表情である。
安心ついでにチラリとスガタに視線をやれば、ばちりと視線が合ってしまい、再び赤面してしまう。
 「恥ずかしいところ、見られちゃった……」
両手で顔を多いながら小さくしゃがみこんでしまったタクトに、スガタは満面の笑みを浮かべながらそっと近寄ると、よしよしと頭を撫で始めた。
 「スガタはよく普通でいられるね」
両手と膝の間からくぐもった声が漏れてくる。隠しきれなかった耳はやはり真っ赤である。
 「こんな可愛いタクトをひとりじめできるなんで、僕はついてるなと思ってただけだけど」
 「スガタさんは意地が悪いですね」
 「部活中に積極的なタクトが悪いな」
 「そ、それはスガタが!」
 そんな2人のやりとりを、廊下からそっと覗いているワコは少々呆れた顔をしている。しかしどこか嬉しそうにも見える。
自分には引き出すことのできないスガタの表情や行動に、スガタにとってどれだけタクトが特別な存在なのかが手に取るようにわかるからだ。
 さてこれからどうしたものかと、廊下の壁に寄りかかりながらワコはひとつため息を付いたのだった。
部室の中からは、お互いを思い合う2つ分の声が聞こえてくる。

END



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