sweet box


 部活の買出しに行かされたタクトとスガタは部長のメモ書き通りに店をまわり、大きな紙袋を3つ抱えながら学園への道のりを歩いていた。
袋の中身は今度の学園祭で使う大道具の材料と、衣装用の布である。それほど重量のあるものではないものの、気を使ったタクトが両手に荷物を持っていた。
 「なあタクト、両腕に持ってたら疲れるだろ?そろそろ僕が一つ持つからかせ」
だんだんと歩みの遅くなっていくタクトに気づいたスガタが声をかけると、視線を合わせたタクトがブンブンと首を左右に振った。
 「いいって!そんなに重たいものじゃないし…むしろスガタが持ってるやつが一番重たいだろ」
だから平気なの。そう言ってタクトは「ほらまだ元気!」と荷物ごと両腕を上げて見せる。
そんなタクトにスガタは苦笑いすると、口には出さなかったが「強情なやつ」とため息を付いた。

 「あれ?」
 それからたわい無い会話をしながら歩いていた二人だったが、タクトが妙な声をあげて空を見上げた。
 「どうかしたか?」
 「あ、いや。今なんか顔にポツンて」
空を見上げたままその場に立ち止まるタクトに、スガタも釣られて空を見上げる。すると先程まで晴れていたはずの空はどんよりとした雲を連れていて、夕立の気配がしていた。
 「これは早くしないと降られそうだな」
視線をタクトに戻したスガタは、ぼんやりとしていたタクトから1つ荷物を奪い去るとさっさと先に歩き出した。
 「ちょ!あれっ!?スガタ待って!」
荷物を取られた驚きと、置いてかれると焦ったタクトは足早にスガタの隣へ向かう。
 そうこうしている間にポツリポツリと、先程よりも多く雫が降ってくる。とうとう本格的に夕立となったようで、大粒の雨が二人の肩を叩いた。
 「うわ!降ってきちゃったよっ」
1つになった荷物を濡れないようにと胸に抱えなおして、タクトは慌てた声を上げる。とりあえずどこかに避難しようと辺りを見回してみると、スガタが片腕に荷物を持ち直してタクトの腕を取った。
 「走るぞタクト!」
 「えっど、どこに!?」
 「いいから付いてこい!」
スガタに連れられ路地に入ると、電信柱の裏に電話ボックスが見えた。そこを目指しているのだと察したタクトは、スガタの負担にならないようにと走る速度を上げる。
予想通り電信柱に隠れた電話ボックスまできて、スガタは扉を開けるとその中にタクトを押しこんで自分も身を滑らせた。
 「こんなところに電話ボックスなんてあったんだね…」
普通もっと分かりやすいところに設置されてない?そう首をひねるタクトをよそに、スガタは荷物を足元に下ろし、タクトが抱えていた荷物も下ろしてやる。
 「あ、ごめん、ありがとう。…それにしても結構濡れちゃったね。じめじめする…」
その言葉につられスガタが視線をタクトの胸元にやると、濡れてしまったシャツから肌がうっすらと透けていて艶かしい。そう思っていると湿ったジャケットが不快だったのか、タクトがネクタイを緩めてジャケットを脱ごうと手をかける。
 「脱いでも仕方ないだろ」
 「でも気持ち悪いじゃん。着てないほうがましだって。スガタも脱げば?」
止める声にも耳を貸さず、簡単にジャケットを脱いでしまう。バサバサと何度か水気を払うと軽く畳んで電話の上に置き、スガタの方へ身体を向き直した。
そこで初めてタクトはスガタを直視した。額に張り付いた髪、自分と同じように水気を含んだジャケット、その下でうっすら肌を透けさせているシャツ。そこまで視線で辿るとスガタが濡れた髪を欝陶しそうに掻き上げ、胸がドキリと高鳴った。
 「何を見てる?僕からしたら、タクトの方こそ」
言いかけて、スガタは口角を上げる。視線の先には赤面して固まるタクトがいた。
 「なんだ、誘っていたわけじゃないのか」
からかいを含んだ声色に、タクトはビクリと肩を揺らした。おずおずと先ほど電話の上においたジャケットに手を伸ばそうとして、腕を掴まれる。驚きスガタを見れば、彼は思いの外真剣な眼差しでこちらを捉えていて、タクトは息を飲んだ。
 「スガタ…?」
しかしその意図がわからず、上目遣いで搾り出すように名前を呼んだタクトだったが、次の瞬間掴まれていた腕を強く引かれたと思えば、あっという間にスガタに抱きすくめられてしまい、唇を塞がれた。
 「んっ…!」
雨に降られた所為でいつもとは違う、濡れた布越しのじんわりとした体温にタクトはゾクゾクと身体を震わす。スガタも、唇だけが熱く熱を持ったようなタクトの身体に夢中でくちづけた。
 「ふ…ぅん、ん…ッは」
くちづけながらタクトの身体はガラスに押し付けるように追い込まれてしまう。力が抜け、そのままずり落ちそうになったタクトに、スガタは足の間に膝を挿し込んで支えてやる。
お互いの両手を絡めあい、身体と同じようにガラスに押し付けられてしまい、タクトは身動きが取れなくなってしまう。
 「スガタ…!ぁっ」
しつこく舌を絡められ、吸い上げられる。口内を舐め上げられ下唇を甘く噛まれて、我慢できずにタクトはスガタの膝に熱くなりかけている自身をこすりつけた。それに気づいたスガタは下から押し上げるように膝に力を込めて、タクトの動きに合わせてこすりあげてやる。
唇の端から唾液を零しながら小さく喘ぐタクトは、ここが外だということすら忘れたように腰を動かすことに夢中になりだしていた。
深く貪っていた唇を離し、スガタは真っ赤に染まったタクトの頬を下から舐め上げる。
 「なあタクト、このまましてたら、僕も我慢できなくなる…」
それでもいいのか?、そう耳元に唇を寄せて低く囁くと、タクトは「あっぁっ!」と切羽詰った声を上げて、両足で思い切り足を挟んだ。
 「もしかして…いまのでイきそうだったの?」
少々驚いた様子のスガタに、タクトは顔から火を吹きそうだった。うっすらと開いた瞳にはいっぱいの涙を溜めていて、今にもこぼれ落ちそうだった。
 「タクト可愛い…」
目元に唇を寄せながらいうスガタは、そのまま涙を吸いとって頬にキスをする。ちゅっちゅと軽いリップ音を立てながら何度もキスをされ、熱く息を吐くタクトは未だ絡められたままの両手にじっとりと汗をかいていた。
タクトの視線の先には二人の体温に曇ったガラスがあって、何故だか気恥ずかしい気分にさせられる。
 「残念だけど、流石にここで最後までっていうのは無理だな。…自分で立てるか?」
それ、収まってないのはわかってるけど。そう熱く囁かれた言葉にまた火をつけられそうになりながら、タクトは焦った様子で首を上下にふる。
 「だ、大丈夫!…だからスガタ、ちょっと、身体離して…」
最後の方はボソボソと言ったタクトは恥ずかしそうに俯いてしまう。そして絡め合っていた手をそっと解いて、もじもじと両手を合わせた。
 「はあ……僕も頭を冷やしたほうがよさそうだ…」
そんな可愛らしい彼に、スガタは額に手を当てて息を付いた。収まらないのはむしろ自分のほうかもしれない。タクトは気づいているのはわからないが、スガタのほうも我慢の限界で、自分を抑えるのに必死だった。
 「雨、止んだら僕の家に行こう。荷物を届けるのは明日でもいいだろ」
言いながらタクトと反対側のガラスに背中を預けて、スガタは意地悪そうに笑った。


END



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