放課後帰り道
部活動もなく、まだ陽のあるうちに下校するのは久しぶりのことだった。
演劇部に所属しているスガタとタクトは、部長の熱の入った演技指導のおかげですっかり陽の暮れた頃に下校することも多い。
そんな日々のため、こんな日は決まってタクトが寄り道をしたがる。
「ねぇスガタ!僕ちょっと行きたいところがあるんだけど、一緒に来てくれる?」
二人並んで歩いていると、スガタよりも一歩前にでたタクトが勢い良く振り返って言う。ふわふわと揺れた真っ赤な髪がスガタの視界で大きく揺れる。
「いいよ。僕も今日は稽古をつける気分じゃないから」
「えっ…そういう問題なんですか?スガタさん…」
軽く承諾してくれた事には素直に嬉しいが、妙な理由が付いてるところがタクトは少々気になり、ガックリとわざと肩を落とすポーズをとる。
スガタに稽古を付けてもらえるのはタクトにとっても嬉しいことなのだが、如何せん彼の稽古は「少し長い」。
もし今日稽古をつける気分だったら自分のこの誘いはあっさり断られていたんだろうか。タクトはそこまで考えて一つため息をついた。
「ふふ、冗談だよ。今日は久しぶりに早いうちに帰れたからね。タクトの好きなところに連れて行って欲しい…かな」
そう言ってスガタはタクトに向かってニコリと微笑む。元々きれいな顔をしているスガタに微笑まれ、タクトの胸はドキリとはねてしまう。
「スガタ…!」
ほんの少し頬を赤く染めたタクトが、キラキラした瞳でスガタに向かって感極まったような、嬉しそうな表情で両手を広げる。
そして想いのままスガタを抱きしめようとした、ところで彼の空いていた右手で額を押さえられあえなく不発に終わってしまった。
「…う。」
「感極まるのは結構なんだが、そうすぐに僕に抱きつこうとするな、タクト」
「んー…どうしてですか、スガタさん?」
スガタは押さえる手はそのままで、そう言って困ったように眉を下げるタクトにまた優しく微笑んで見せる。
「それはね、知りたい?タクト。」
逆に問われ、ぐぅっと声をあげるタクトにスガタは微笑を向けたまま口を開く。その目はなにやら先ほどよりも楽しそうに細められている。
「可愛いタクトに抱きつかれると、僕らがいる場所も忘れてキスしそうになる」
「……へっ!?」
さらりと告げられた、タクトにとってこの上なく恥ずかしい答えに、タクトはボンッと音が聞こえるほどに一瞬で顔を真赤に染め上げる。未だにスガタに押さえつけられている額から、彼にこの熱が伝わってしまうんではないかと言うほどに。
「なっなっ…!」
「ははは、タクト。お前は本当に可愛いな」
満足気にそういったスガタは、未だに真っ赤な顔のままで口をパクパクと開けているタクトをよそに、ようやく手を離してかと思えばスルリとタクトを通りすぎていってしまう。
「おっおいてかないでぇ!」
スガタがいなくなったせいで前のめりに倒れそうになった身体をバネのように戻して、タクトはスガタに振り返ったときよりも勢いをつけて、笑いながら先に歩いて行ってしまったスガタの背中を、両手で未だに熱の引かない頬を挟みながら追いかけるのだった。
今のスガタの言葉が、自分以外の誰の耳にも入ってないことを、祈りつつ。
しかし、すぐに追いついたタクトは羞恥心で潤んだ瞳でスガタを睨んで、またスガタに恥ずかしい言葉をもらってしまうのであった。
END
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